2021年度(第56期)月例天文講座 (2022年3月17日 更新)
回 | 月 日 | 講座題目 | 講師(敬称略) | 参考資料 |
661 | 4月17日(土) | 第25太陽活動周期の始まりと 次期太陽観測衛星Solar-C_EUVST計画 | 渡邊 鉄哉 | 講演要旨 |
662 | 5月15日(土) | 太陽磁場の観測 | 鹿野 良平 | 講演要旨 |
663 | 6月19日(土) | 星の質量と生命誕生の秘密 ---私たちはどこから来たのか? | 田中 培生 | 講演要旨 |
664 | 7月17日(土) | 京大岡山3.8mせいめい望遠鏡 | 長田 哲也 | 講演要旨 |
665 | 8月21日(土) | 地球・生命の起源と進化
「ハビタブルな宇宙」 | 井田 茂 | 講演要旨 |
666 | 9月18日(土) | (天文教育普及賞 受賞記念講演)
国際天文学連合(IAU)と日本の天文学 | 岡村 定矩 | 講演要旨 |
667 | 10月16日(土) | 一般相対性理論の成立と、
アインシュタインの日本訪問 | 中嶋 浩一 | 講演要旨, 講演記録 |
668 | 11月20日(土) | 火星の地質を調べる
各国の火星探査と火星衛星探査計画MMX | 宮本 英昭 | 講演要旨 |
669 | 12月18日(土) | 野辺山の電波望遠鏡の話 | 平林 久 | 講演要旨 |
670 | 2022年 1月15日(土) | 国立天文台前史
緯度観測所の木村栄 | 馬場 幸栄 | 講演要旨 |
671 | 2月19日(土) | VERAが作った銀河系地図 | 本間 希樹 | 講演要旨 |
672 | 3月19日(土) | 宮沢賢治と一緒に銀河鉄道に乗ろう | 谷口 義明 | 講演要旨 |
講師紹介
講演者,講演概要,紹介
(紹介文は本ページ管理者中嶋の作成になるものであり,講演者との打ち合わせなど
により随時変更されます. 以下は,
8月3日 更新のもの.)
* 4月17日, 渡邊鉄哉 先生:
渡邊先生は,長年国立天文台で太陽研究の中心として活躍してこられました.
特に,衛星による太陽観測にはすべて携わり,「ひのとり」,「ようこう」,「ひので」
などで大きな成果を上げています.そして定年後も次期太陽観測衛星「SOLAR-C」の推進に
大きな役割を果たしています.
太陽は,長らく黒点がほとんど見えない状況が続いていましたが,このところようやく黒点が
出現してきました.この黒点の出現の増減は,約11年の周期で繰り返しますが,その理由は今もって
大きなナゾとなっています.また太陽の周囲に広がる「太陽コロナ」は数百万度という高温の状態に
ありますが,太陽表面の温度6千度からどうやってこの高温が作り出されるのか,まだまだナゾに
つつまれています.
これらを解明するカギは太陽に発生する「磁力線」であるのですが,この磁力線を詳しく調べるには
ロケットや衛星を用いた宇宙空間からの観測が必須となります.今回,これらの第1人者としての渡邊先生に
最先端のお話を伺います.
なお,今回の先生のお話は学園の教室からZoom発信される予定です.
* 5月15日,鹿野良平 先生:
鹿野先生は,国立天文台でロケットによる太陽観測に携わって
来られました.そしてその一つの成果が,3月7日の日経新聞に
「太陽の磁場,高層に熱運搬」という見出しの記事として報道されました.
4月の渡邊先生の概要紹介でも説明したように,太陽コロナは数百万度という
高温のガス体であり,これがどうして6千度の温度の太陽エネルギーで加熱されるのか,
というのが大きなナゾになっています.そしてこれの解決のカギは「太陽磁場」にあります.
太陽磁場を詳しく観測するには,どうしても紫外線など,地表からは観測できない光で
観測しなければなりませんが,このためには大気圏外に出るロケットや衛星が必要です.
特にロケット観測の分野では,日本を中心とする国際共同チームが「CLASP」と称する
観測装置を開発して太陽磁場の観測をおこない,大成功を収めてきました.
鹿野先生には,コロナの高温のナゾと太陽磁場との関係,およびロケット観測の成果などを
お話しいただく予定です.
* 6月19日,田中培生 先生:
田中先生は東京大学理学部付属,天文学教育研究センターにおいて,
長らく赤外線天文学,および恒星の進化理論の研究を続けてこられ,
この3月に同センターを定年退職されました.
田中先生はご専門の研究の傍ら,現代天文学における宇宙の理解,
宇宙の考え方について,一般の方々にわかりやすく解説する活動にも
携わって来られました.今回の講演では,ご専門の赤外線天文学,および
恒星進化の理論などからもたらされる宇宙の見方,などについて
お話いただく予定です.
* 7月17日,長田哲也 先生:
長田先生の研究テーマは「銀河系の中心部の星団やブラックホール周辺の現象を、赤外線の透過力を利用して観測」
(京都大学研究者データベースより)となっていますが,近年は,その赤外線の観測のための新しい望遠鏡「せいめい望遠鏡」
の開発に携わって来られました.この望遠鏡は2019年より観測を開始し,超新星観測やフレア星観測で成果を出しつつ
あります(天文月報5月号).望遠鏡の名称は,平安時代の京都の陰陽師,天文学者の「安倍晴明」に因んだものです.
この望遠鏡の開発に先頭に立って取り組んでこられた長田先生に,その特長やねらいなどについてお話しをしていただきます.
* 8月21日,井田 茂 先生:
井田 茂先生は東京工業大学で、宇宙・地球・生命の起源を研究する研究室を主宰され、
また同大学の研究拠点組織としての「地球生命研究所」(略称 ELSI)の副所長をして
おられます。講座では、太陽系外惑星探査や地球外生命探査の研究最前線についてお話し
いただく予定です。以下に、先生の研究室ホームページからの引用を掲示します:
宇宙・地球・生命の起源
夜空を見上げると光り輝く星々に圧倒されますが、宇宙には数多くの惑星が存在することが
わかってきました。 しかし、惑星がどのように生まれ、どのように進化するのかなどはあまり
わかっておらず、多くの謎に満ちている分野でもあります。
惑星科学理論構築に向けて
我々は、原始惑星系円盤・惑星系形成過程・内部構造進化など様々な角度から、 N体シミュ
レーションや流体シミュレーションを始めとした数値シミュレーションを軸に、 解析的手法・
系外惑星観測を加えた様々なアプローチ方法でこれらの謎の解決に取り組んでいます。
* 9月18日,岡村 定矩 先生:
岡村先生は元東京大学副学長、現在は「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」の
エグゼクティブ・ディレクターとして活躍しておられます。駿台天文講座では、2006年の40周年記念講演で
お話していただきました。
これまでの駿台講座でのお話は、ご専門の「銀河」のお話が中心でしたが、今回は「国際天文学連合
と日本の天文学」についてお話しいただきます。本テーマの関連記事が、天文月報2020年
3月号、
4月号、
5月号に掲載され
ています。国際天文学連合は2019年に百周年を迎えましたが、岡村先生の記事は、天文学連合の100年の歩みと、それに
並行して日本の天文学の100年を解説し、最後に日本の天文学の最新の状況と、国際的な天文学界での日本の進むべき方向
などについて述べておられます。ぜひご一読を。
* 10月16日,中嶋 浩一:
(省略)
* 11月20日,宮本 英昭 先生:
宮本先生は、東京大学大学院システム創成学専攻および地球惑星科学専攻の教授として、太陽系探査と宇宙資源工学
の研究をリードしておられます。研究のテーマは、太陽系諸惑星、諸小惑星の表面地質の分析と、それらの資源としての
利用の研究など多岐にわたりますが、今回は近年各国で急速に進展している「火星探査」について解説していただきます。
特に、はやぶさに続く日本の惑星探査の「火星衛星探査計画MMX」が注目です。
* 12月18日,平林 久 先生:
=========== 昨年度のご紹介文 ============
平林先生は,電波天文学を中心とした天文学研究で活躍して来られました.JAXA,宇宙
科学研究所におられた時には,大きな電波望遠鏡を宇宙に打ち上げて大規模な電波干渉計
を構成する「VSOP計画」(衛星名は「はるか」)を指揮され,大きな成果を収められまし
た.(「電波干渉計」は,複数の電波望遠鏡を束ねて高精度電波観測を行うこと.)
他方でまた,電波望遠鏡を駆使して遠くの宇宙の地球外文明からの信号を探ろうという
「SETI計画」にも関わっておられます.
平林先生は,駿台学園の天文講座などにも長年ご尽力いただいており,先生のお話しに
は定評があります.近著『超巨大ブラックホールに迫る―「はるか」が創った3万㎞の瞳 』
など,著書多数.
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野辺山の電波天文台は、1969年10月にまず太陽電波観測所として開所式を迎えましたが、
平林先生はその当初から野辺山に関わって来られました。日本の電波天文学は、この野辺山観測所で
大きな発展を遂げましたが、近年、その主力は国際協力のアルマ望遠鏡などの方向に移行しています。
今回、平林先生に、この野辺山電波天文台の偉大な足跡をしっかり辿っていただく予定です。
* (2022年)1月15日,馬場 幸栄 先生:
日本の科学の発展の一つの記念碑として「Z項の発見」というのがあり、日本史の教科書にも載って
いますが、その内容についてはほとんど理解されていないというのが現状ではないでしょうか。併せて、
その発見者の木村栄(ひさし)も、名前が出ている割には業績や人柄などが紹介される機会が
たいへん少ないのではないかと思います。
ちょうど百年前の 1922年に、日本の緯度観測事業はその優秀さが世界に認められ、水沢緯度観測所が
その事業の「中央局」を担当することになりました。また木村栄はその中央局長になり、名実ともに世界の
研究の先頭に立ったわけです。中央局百周年のこの機会に、木村栄の事績について長年研究してこられた
馬場先生に、木村栄の業績や人柄についてお話いただきたいと思います。
なお、木村栄についての馬場先生の記事が、国立天文台ニュース、
2019年12月号、
2020年1月号に出て
います。ご覧ください。
* 2月19日,本間 希樹 先生:
都会ではなかなか見られませんが、夏休み、都会を離れて山奥のキャンプ場に行くと、漆黒の夜空にたくさんの星と、天空を横切る大きな天の川を見ることができます。この「天の川」は一体全体何なのでしょうか、また現代天文学ではどのようなことがわかっているのでしょうか?今回は、天の川研究の第一線で活躍しておられる国立天文台の本間希樹先生に、その特色ある研究方法と最新の成果についてお話を伺います。
研究の名称は「VERAプロジェクト」、研究の中心は岩手県奥州市の「国立天文台水沢VLBI観測所」です。また「VERA」とは「VLBI Exploration of Radio Astrometry」を略したもので、ラテン語では「真実」を意味します。観測所のホームページでは、「VERAは、銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクトです。VLBIという電波干渉計の手法を用いて、銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない高い精度で計測し、銀河系の真の姿を明らかにします。」と書いてあります。天文学では、天の川のことを「銀河系」といいます。
「VLBI」というのは、電波望遠鏡を用いて天体の構造や位置を高精度で観測する手法です。また天体位置を精密に測定できれば、「地球公転軌道による視差」という方法を用いて天体までの距離を精密に測ることができます。これまでの可視光による観測では 300光年が限界だった距離測定が、VERAではその100倍の3万光年になる、ということです。これにより、直径約10万光年と言われる「天の川銀河系」のかなりの部分の天体の3次元位置を測定することができ、その結果これまでにない高い精度で銀河系内の天体分布、すなわち銀河系の地図を作ることができた、というわけです。
* 3月19日,谷口 義明 先生:
谷口先生は、2020年7月に
“天文学者が解説する 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅” という本を出版されました(光文社新書)。これは、前半では『銀河鉄道の夜』が書かれた背景について広汎な資料に依って考察し、また後半では『銀河鉄道の夜』の文章を逐一たどりながらそこに登場する各種天体について天文学者の立場から詳しく解説する、という大変ユニークな本です。
谷口先生には、これまでも駿台天文講座でご専門のクェーサーやブラックホールについてお話しいただいていますが、今回は趣を変えて宮沢賢治について伺う予定です。