2021年12月18日 第669回 月例天文講座
野辺山の電波望遠鏡の話
JAXA宇宙科学研究所名誉教授 平林 久
初めに
・戦後、日本で太陽電波天文学が芽生えた。
大阪市立大学 小田、高倉
名大空電研究所 田中
東京天文台 リーダー:畑中、他
・大型電波将来計画、、、「まず太陽電波、次に宇宙電波」の方針
「野辺山に太陽電波干渉計」との決定
初期の電波望遠鏡
・160MHz太陽電波干渉計
不完全な観測装置
東西干渉計 と 南北干渉計 1次元
統一チームの欠如
小さな野辺山太陽電波グループが必死で運用、後の17GHz干渉計の開発実現に賭けた。
・オーストラリア カルグーラ ラジオヘリオグラフ
ワイルドのリーダーシップ
卓越した2次元像合成(ベッセル関数を使った「J2乗合成」)リアルタイムスキャン
観測周波数40, 80, 160MHz 世界を完全リード
1980年代
・1980年代は、野辺山周辺で大型観測装置が動き出した
1982年 野辺山宇宙電波観測所 45m宇宙電波望遠鏡
(国立天文台)
1984年 臼田深宇宙観測所 64m通信アンテナ
(宇宙科学研究所)
1983年 神岡宇宙線観測所 カミオカンデ
(宇宙線研究所)
大型宇宙電波望遠鏡計画実現
・45m電波望遠鏡
創意に富んだミリ波アンテナ 三菱電機と高い鏡面精度を積極的に目指して;
ホモロガス変形 鏡面がパラボラの族に変形する構造をとる
背面温度均一化 パネル背面構造を囲い、空気を攪拌する
600枚のパネル遠隔調整
鏡面測定
ゲージ測定 レーザー測距 ホログラフィー法 鏡面精度0.1mmを超える
マスターコリメーター追尾 精度の高いAz-El追尾を基準とする
ビーム伝送・切替
・AOS(音響光学分光計)による分光性能の例
広帯域幅2GHz, 3 2,000チャネル
NGC4258 に超巨大ブラックホール発見
水メーザー輝線の高速度成分(中井他 1993)
BH周回円盤 (三好他 1995) VLBI 3700万太陽質量
2020年ノーベル物理学賞
英・オックスフォード大学 Roger Penrose ブラックホール理論
独・マックスプランク研究所 Reinhard Genzel 銀河中心ブラックホール
米・カリフォルニア大学 Andrea Ghez 銀河中心ブラックホール
スペースVLBI実験
TDRSS衛星 45mは15GHzで参加
HALCA/VSOPの実現へ
予算1989-、 「はるか」打ち上げ1997、 公開観測1997-2005
5素子ミリ波干渉計
ライルの「開口合成法」電波望遠鏡 地球回転を利用した「超合成」
世界に先駆けた「FX方式」の干渉計 以下世界標準となる
近田さん考案(富士通と設計、製作)
野辺山 ラジオヘリオグラフ
名大空電研グループ合流して名機の誕生
観測周波数 17, 34GHz2帯
2次元開口合成型 1ビット相互相関方式 リアルタイム
完成 観測運用(1992- )
野辺山宇宙電波の開かれた運営
科学コミュニティとの連携 宇宙電波懇談会
共同利用方式
研究者が装置開発から関わる
野辺山からの観測装置と人の流れ(左から右に流れる)
45m SUBARU TMT
㎜波VLBI EHT
TDRSS/OVLBI HALCA/VSOP (VSOP-2)
VERA JVN EAVN
SKA-1 SKA-2 ? ngVLA ?
5素子干渉計 ALMA ALMA-2?
160MHz干渉計 ラジオヘリオグラフ
まとめ
野辺山は日本の電波天文学の源流。
野辺山では、いくつかの電波望遠鏡の消長があった。
野辺山の電波望遠鏡は、生きもののよう。
関連年表
1949 太陽電波初受信 畑中グループ(東京天文台)
小田、高倉(大阪大)
1953 10m 赤道儀(東京天文台)
多素子干渉計〈名大空電研)田中
1961 将来計画 「まず太陽電波、次に宇宙電波」の方針
1963 畑中さん死 Hx入学
1967 学術会議へ計画提案
1970 野辺山太陽電波観測所 160MHz干渉計 Hx太陽電波採用
学術会議決議、場所は野辺山に決定
1976 Hx宇宙電波移籍
1978 45m望遠鏡、5素子干渉計 建設開始
1982 野辺山宇宙電波観測所 45m望遠鏡、5素子干渉計
1988 Hx宇宙研移籍
1992 電波へリオグラフ
1997 「はるか」打ち上げ/VSOP
[参考] (中嶋記)
*右上の電波望遠鏡の図は
野辺山電波天文台のページ より。