2022年8月20日 第677回 月例天文講座
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と
期待される成果
東京大学宇宙線研究所助教 播金優一
(右図はウィキペディアより)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) はNASA/ESA/CSAによる口径6.5メートルの赤外線望遠鏡です。大口径を生かし赤外域で他の望遠鏡に比べて10倍から100倍以上の圧倒的な感度を達成し、初代銀河や星・惑星形成の現場を観測することを目標としています。JWSTによる研究の進展は凄まじく、特に私の専門とする遠方銀河の研究分野では、JWSTの最初のデータ公開直後からほぼ毎日新しい発見が報告されています。
本講演ではまず最初に、JWSTが得意とする初代銀河・遠方銀河研究の目標と科学的な意義について説明し、JWST登場以前のこれまでの研究でわかってきたことを紹介します。すばる望遠鏡やハッブル望遠鏡、アルマ望遠鏡を使った研究により、135億年前までは遠方銀河の候補が見つかってきていました。一方でそれ以前の宇宙に存在する銀河の様子や、遠方の銀河の詳細な性質はよくわかっていませんでした。JWSTはその高い感度を持って、135億年前より昔の宇宙初期に誕生したような初代銀河を見つけたり、酸素の量といった銀河の物理的性質を調査することが期待されています。講演の後半ではJWSTの観測装置や観測プログラムの概要を紹介します。この夏に始まった観測は非常に順調に進んでおり、取得されたJWSTのデータは世界中の天文学者たちに衝撃を与えました。最後にJWSTによる遠方銀河研究の現在までの進展や今後期待されることなどについてお話しできればと思います。
参考(中嶋記)
*
天文月報2022年3月号の播金先生の記事
*
135億光年かなたの最遠方銀河の候補を発見(宇宙線研究所,プレスリリース)