地球接近天体(Near Earth Object;以下NEO)の地球衝突による被害が少なくなるように対策を考える活動をスペースガード/プラネタリーディフェンスと呼んでいる。大きさが数kmを超えるNEOはほぼすべて発見されたと考えられているが、小サイズのものは未発見のものが多く10mサイズのものまで含めると99.9%が未発見である。2013年にロシア・チェリャビンスクに落下した隕石は20mほどであるが、1500人もの人々が負傷した。10mサイズのNEOを多数発見して軌道を決定することはプラネタリーディフェンスの観点のみならず、NEOの起源や軌道進化を調べる観点からも重要である。
講演ではわれわれが進めているNEO探索プロジェクトについて紹介する。主役は東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載された「トモエゴゼンカメラ」である。このカメラは広視野を高速ビデオ撮影できる装置であり、NEOのような移動天体の観測に適している。一方「重ね合わせ法」という、移動天体を高感度で検出するためのデータ処理手法がある。小型望遠鏡を用いてNEOを11個発見した実績があるこのデータ処理法をトモエゴゼンカメラの観測データに適用することにより、その相乗効果によってより小さいNEOを大量に発見しようというのが本プロジェクトの目的である。