2024年1月20日 第694回 月例天文講座
星空を守る仕事
ー 国立天文台周波数資源保護室
国立天文台周波数資源保護室 室長 平松正顕
(右図は周波数資源保護活動について解説したポスター。クリックで拡大)
夜に空を見上げると、星が見える。都会では、これが当然のことではなくなっています。建物から漏れる光、建物を照らす光、看板の光など、様々な照明が本来照らす必要のない夜空に届き、夜空を明るくしてしまっています。単に星が見えなくなるだけでなく、鳥や虫、植物や人間の生態リズムにも影響を与えています。こうした問題を「光害(ひかりがい)」と呼びます。
何億年もかけて地球に届く天体からの微かな光を捉える天文学にとって、光害は50年以上前から取り組んできたテーマです。さらに最近では、多数打ち上げられている人工衛星が太陽の光を反射して明るく見える、という新しい問題も出てきています。
ところが、天文学に影響を与えるのは光だけではありません。天文学者が宇宙を見る目は光だけではなく、電波にも広がっています。電波といえば、携帯電話やwi-fi、車載レーダーや気象観測など、現代社会のあらゆる場面で使われています。電波は便利で安全な生活を送る上で欠かせない存在ですので、その恩恵を損なわないようにしながら宇宙からの微弱な電波を観測するための工夫が求められます。
光と電波の両方で天文観測環境を守る活動をしているのが、国立天文台周波数資源保護室です。電波の使い方を総務省や通信企業の皆さんと議論したり、国際的な枠組みの中で電波天文観測環境を守るために国際電気通信連合の会議に参加したり、夜空の明るさを測ったり人工衛星の明るさを測定したりと、良好な天文観測環境の保護と便利で安全な社会を両立するために日々活動しています。今回の講座では、普段あまり目につかないであろうこうした活動のご紹介を通じて、天文観測環境保護の輪を広げるきっかけにしたいと考えています。
参考資料 (中嶋記)
*右上図は
周波数資源保護室のページ より。
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国立天文台 周波数資源保護室
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天文月報、関連記事(2015年9月号)「電波天文学を守るために」
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天文月報、関連記事(2020年3月号)「巨大通信衛星網による天文観測への影響」