2026年1月17日 第718回 月例天文講座
ウィキペディアを通じた天文普及
ウィキプロジェクト天体 小林道生
講演要旨:
(1月15日 改定)
1. ウィキペディアの「編集の三大方針」
ウィキペディアは2001年に誕生した「自由な百科事典」で、
誰もが無償で閲覧・編集できるのが特徴です 。しかし、単に
自由に書けるわけではなく、記事の品質を保つために以下の「三大方針」が定められています 。
* 中立的な観点
事実と意見を分け、対立する意見も公平に扱うこと 。
* 検証可能性
書かれた内容が信頼できる情報源(本や論文など)に基づいているか、誰でも確認できること。
* 独自研究は載せない
どこにも発表されていない自分だけの新説やアイデアを書かないこと 。
特に「検証可能性」は重要で、ウィキペディアでは「真実かどうか」よりも「信頼できる出典を根拠に記述されているか」に重きが置かれます。
2. 賢い使いかた:本文よりも「出典」を見よう
「ウィキペディアをレポートの出典にしていいか?」という疑問に対しては「使いかた次第」と述べています。ウィキペディア自体はあくまで「情報のポータル(入り口)」であり、書かれた記事の本文そのものを根拠とするのではなく、記事の末尾に列挙された「出典(参考文献)」を確認し、その資料を参考としてください。
3. 日本語版の天文記事の現状
現在、日本語版には約10,000件の天文関連記事があります。しかし、天文記事の編集に携わるアクティブな人数は「ウィキプロジェクト天体」というグループでわずか7-8名ほどしかいません 。これは英語版の約240名と比較しても非常に少なく、専門性の高い理論などの記事が不足している原因にもなっています。
一定の編集実績がある人に対しては、有償の学術誌を無料で閲覧できる「ウィキペディア図書館」という仕組みが提供されており、有志の編集者が質の高い記事を書く一助となっています。
4. 星座の成り立ちや伝承をより正しく伝えていく
講演者はこの数年間個人の取り組みとして、88星座の記事一つ一つを抜本的に改稿するプロジェクトに挑んでいます。実は、日本で親しまれてきた古い星座の本には、著者の独自解釈や神話の混同が含まれたものが多く、その結果事実とは異なる情報だけが広まってしまっています。この状況を打開すべく、国内外の最新の研究結果に基づいてウィキペディアの星座関連記事をより事実に近い内容に整えていくことで、人間だけでなく生成AIの学習データとしても正しい情報を提供することを目指しています。
5. まとめ
ウィキペディアは、みんなの協力で作り上げる「知識の宝庫」です。専門家からライトな層まで、より多くの人が「出典をつけて加筆する」といった形で参加し、情報の質を高めていくことを期待しています。