国立天文台2023年カレンダー 解説  (中嶋作成、12月24日改定)


                        左上から右へ、順に1月、2月、3月…  (クリックで拡大)        *1月: 宇宙の大規模構造   → 宇宙は今から約138億年前に、ビッグバンという現象とともに始まりました。その時にできた     宇宙物質は、始めは一様に分布していましたが、やがて万有引力によって集まり始め、図のような     形になりました。現在の宇宙の中の銀河の分布を見ると、これによく似た形になっています。     → 実際に観測された宇宙の大規模構造(wikipedia) *2月: 銀河団磁場と銀河ジェット     → 銀河がたくさん集まっている場所を「銀河団」と言います。銀河団が形成されるときには、たくさんの     銀河とともに「磁力線」が形成されます。また、銀河は中心部に巨大ブラックホールが形成されると、     そこから巨大なジェットが噴出しますが、これが磁力線にぶつかると、磁力との相互作用で折れ曲     がったりすることがあります。図の黄色の線は磁力線で、その中で空色のジェットが折れ曲がっている     のがわかります。     → M87銀河からのジェット *3月: 小惑星「カリクロー」のリング     → 「カリクロー」という小惑星には、土星の輪のようなリングがあることがわかっています。     小惑星はたいへん小さい天体なので望遠鏡でリングを観察することはできませんが、コンピュータ     シミュレーションによってこのリングを計算すると、リングのいろいろな性質がわかってきます。     くわしくは下記をご覧ください。     → 輪のある小惑星「カリクロー」の説明ページ     → カレンダーの図の動画 *4月: ブラックホールの周りのガス円盤    → ブラックホールに星が吸い込まれるとき、星はばらばらに分解されて雲のようになり、これが巨大な     渦巻となってグルグル回りながらブラックホールに吸い込まれてゆきます。このように回転しながら     収縮してゆく渦巻からは、回転軸方法に強力なジェットが噴出します。図は、その様子をコンピュータ     シミュレーションで描いたものです。     → ブラックホールの周りのガス円盤の動画 *5月: 超新星爆発の内部のようす     → 太陽の何十倍も重たい星は、その一生の最後に大爆発を起こします。これが「超新星爆発」です。     「超新星」といっても新しい星ではなく、爆発によって今までよく見えなかった星が急に見えるように     なるので、むかしは「新星」だと思っていたわけです。     そのような大爆発がどのようにして起こるのかは今までよくわかっていませんでしたが、コンピュータ     シミュレーションによってじょじょに解明されてきています。     → シミュレーション画面作者のインタビュー *6月: 大星雲の中での星団の形成     → ちょうど雷雲の中で水滴が誕生して雨粒や「ひょう」ができるように、大きな星雲の中では雲の物質     が集まって星が形成されます。オリオン大星雲はちょうどそのような状況にある星雲ですが、星の     誕生のコンピュータシミュレーションによって、その状況がきれいに再現されました。     → 星団の形成の動画     → オリオン大星雲の写真 (国立天文台) *7月: ガス雲のガスを集めて星が形成されるところ     → 星雲の中から星が形成されるとき、その途上でときどき小規模な爆発が起きることがあり、それが     X線の放射として観測されます。この爆発は、ちょうど太陽黒点の上での爆発(太陽フレア)と同じ     ように磁力線の作用によって起こるものと考えられますが、この図はそれをコンピュータシミュレー     ションによって再現したものです。 *8月: 小惑星同士の衝突の破片があちこちで集まってさらに小さな小惑星が形成されるようす     → 太陽系内にたくさんある小惑星は、ときどき衝突してバラバラになり、そしてその破片が集まってたく     さんの小さな小惑星になると考えられますが、次の動画はこれをコンピュータで再現したものです。     → 小惑星衝突とその後の変化の動画 *9月: ガス雲のガスを集めて三重連星が形成されるようす     → 星雲の中から星が形成される際、一か所で2個以上の星が形成されることがあります。このような     星を「連星」と言いますが、連星は回転しながら形成されるために、ガス雲の収縮のかたちはたいへん     複雑になります。     → 三重連星の形成の動画 *10月: 太陽系惑星の形成の始まりで、小さなチリがだんだん集まって微惑星が形成されるようす     → 星雲の中から星が形成される際、形成されつつある星の周りで渦を巻く回転ガス円盤(これを     「原始惑星系円盤」といいます)の中からさらに小さな星が形成され、それが「惑星」となります。     その形成のプロセスは、まずガス(気体)が集まってチリ(粒子)となり、さらにチリが集まって     大きさが数km ほどの「微惑星」が形成されます。この微惑星が、長い年月をかけて衝突合体を     くり返し、やがて惑星になります。     → 微惑星形成の動画 *11月: 渦巻銀河の中心部の棒状構造ができてゆくようす   → 私たちの天の川銀河の中心部には、図のような明るく輝く「バルジ」と呼ばれる部分と、それを     つらぬくような「棒状の構造」があることがわかっています。これらがどのようにして形成され、     またどのような性質を持っているかということを、渦巻銀河形成のコンピュータシミュレーション     によって推定します。くわしくは下記の説明をご覧ください。     → 棒状銀河の説明と、形成の様子の動画 *12月: 土星の環に見られる「衝効果」。太陽と観測者と一直線になる部分が明るくなる。   → 国立天文台が開発・提供している天文シミュレーションソフト Mitaka および Mitaka++ は、     画面の中で自由に太陽系や宇宙の中を飛びまわり、また惑星に近づいて眺めたりすることが     できます。図は土星とその輪を眺めたものですが、太陽と観測者を一直線に結ぶ線が輪と交わる     部分が明るく輝く「衝効果」という現象が、シミュレーションによって再現されています。