黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数
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6月の平均黒点相対数は19.60でした。南北半球別では、北半球が 11.80、南半球が7.80 でした。南北半球共に、先月の半分以下の黒点相対数となりました。日毎で見ると、太陽観測所の6月の観測日数は15日間でしたが、このうち4日間が無黒点でした。太陽観測所の観測では、2014年7月17日以来の無黒点です。2014年7月より前の無黒点の観測は2011年8月15日でした。
図1.a,図1.b は、それぞれ、2016年6月3日のほぼ同時刻に撮像された、太陽全面白色光像 (太陽光球像)、及び、太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像)です。太陽光球では黒点が一つもなくのっぺらとしていますが、この場合でも、その上空の彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造があるのが見て取れます。
6月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが6回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。Cクラス以上のフレアの総数が、今太陽活動周期のピーク以後初めて1桁を記録しました。黒点相対数とフレアの発生数が共にこのレベルまで低かったのは、2010年12月以来です。今サイクルの太陽活動が、2008~2009年の極小・2014年の極大の後、急速に次の極小へと向かっていることがわかります。
最後に、太陽観測所フレア望遠鏡Hα観測装置が6月に捉えた活動イベントを紹介します。図2は、6月27日に太陽の東の縁の上空で発生したプロミネンス噴出です(ムービー)。図上、上が北、左が太陽の東に対応します。北から南へと噴出したプロミネンスが、回転するような運動を示しながら上昇を始めるのが見て取れます。このイベントは6月に観測できた唯一のダイナミカルな活動現象となりました。
※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)
図1.a(左): 2016年6月3日 三鷹新黒点望遠鏡 太陽全面白色光像 (太陽光球像): この日は無黒点であった。
図1.b(右): 図1.a とほぼ同時刻の 三鷹太陽フレア望遠鏡 太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像):太陽光球面で無黒点でも、太陽彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造が見える。
図2: 2016年6月27日に太陽の東の縁上空で発生したプロミネンス噴出(画像、ムービー): 三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
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